毎日撮るのが理想だとしても、現実には仕事や生活のノイズがそれを阻むことがある。
ならば、戦い方を変えればいい。
ダラダラと撮り続けるのではなく、週末の限られた3時間にすべてを注ぎ込む。
量ではなく密度で勝負するスタイルだ。
短時間で強制的にクリエイティブなゾーンに入り、確実に撮れ高を確保するための、僕なりのルーティンを紹介しよう。
Googleマップはナビではなく、路地裏への招待状として使う
週末の貴重な時間を、行き当たりばったりの散歩で消費してはいけない。
僕は家を出る前、必ずGoogleマップを開く。
だが、目的地を設定するためではない。
誰も通らないような裏道を探すためだ。
メインストリートは情報過多で、すでに誰かが撮り尽くした構図ばかりが転がっている。
対して、地図上の細く入り組んだグレーのライン――路地裏こそが、都市の血管であり、未発掘の被写体が眠る鉱脈だ。
ストリートビューでざっくりと雰囲気を確認し、生活感の匂いがするエリアに当たりをつける。
古びた室外機の配列、不規則に並ぶ看板、アスファルトのひび割れ。
そうしたテクスチャが密集している場所をピンポイントで狙うのだ。
現場に着いたら、ナビは切る。
迷うこと自体を楽しむためだ。
あえて知らない道を歩くという行為が、クリエイティブなスイッチをオンにするトリガーとなる。
聴覚をハッキングして強制的にゾーンへ潜る
街に出ると、車の走行音や他人の会話など、不要な環境音が集中力を削いでくる。
3時間という短時間で結果を出すには、周囲の世界と自分を切り離し、自分の内面と被写体だけがリンクする没入状態(ゾーン)へ一気に潜る必要がある。
そのための最強のツールが、ノイズキャンセリングイヤホンと音楽だ。
かける音楽は、歌詞のないインストゥルメンタルや、聴き慣れたプレイリストがいい。
BPMは、自分の歩く速度、あるいはシャッターを切りたいリズムに合わせる。
音楽を流すことで、目の前の景色が映画のワンシーンのようにドラマチックに見えてくる経験はないだろうか。
あれを意図的に作り出すのだ。
聴覚をハッキングすることで、思考から論理的なノイズが消え、直感だけでシャッターを切れるようになる。
なぜこれを撮るのかなんて考える前に、指が動いている状態。
このトランス状態こそが、理屈を超えた一枚を生み出す土壌となる。
街のノイズを遮断し、自分だけのサウンドトラックに乗って歩くとき、カメラは身体の一部と化す。
撮影の熱が冷める前にカフェで完結させる
3時間歩き回り、集中力が切れかかったタイミングが撮影終了の合図だ。
だが、まだ家に帰ってはいけない。
そのまま近くのカフェに入り、PCかタブレットを開く。
ここからが、このセッションの総仕上げだ。
多くの人は、撮ったデータを一旦持ち帰るという選択をする。
しかし、帰宅してソファに座った瞬間、日常のモードに引き戻され、SDカードの中身はデータの肥やしになってしまう。
撮影の熱が残っているうちに、その場でセレクト(選別)まで完了させるのだ。
カフェでのルールはシンプルだ。
今日の一枚を決めること。
そして、明らかに不要なデータはその場で削除するか、アーカイブへ隔離する。
数百枚撮ったとしても、本当に価値があるのは数枚程度。
その数枚を救い出し、現像の方向性まで決めてしまう。
ここまでやって初めて、週末の撮影は完結する。
家に未処理のデータを持ち込まないこと。
これは、部屋に荷物を増やさないのと同義であり、クリエイティブな思考をクリアに保つための鉄則だ。
3時間、路地裏に迷い込み、音に没入し、カフェで完結させる。
この濃密なサイクルを回すことができれば、毎日の撮影が難しくても、着実に質の高いポートフォリオは積み上がっていく。
時間は有限。
だからこそ、その使い道には徹底的にこだわるべきだ。
次に晴れた週末、あなたはどの路地へ消えるだろうか。
