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「売る or 残す」基準について

機材の整理をしようと防湿庫を開けたとき、多くの人が陥る思考停止がある。

これは高かったから。まだ使えるから。

この感情論は、新陳代謝の最大の敵だ。

使用頻度が低くても手放してはいけないモノがある一方で、毎日使っていても売るべきモノがある。

その逆説的な判断基準こそが、あなたのポートフォリオを鋭くする。

役割の被りを許容するか、排除するか

最も悩み深いのが、焦点距離が被っているレンズの処遇だ。

例えば「24-70mm F2.8」のズームと、「50mm F1.4」の単焦点を持っている場合。50mm域は完全に被っている。

ここで考えるべきは役割(ロール)だ。
もし、あなたがズームレンズの利便性に甘えて、単焦点の出番が減っているなら、それはズームレンズを売るタイミングかもしれない。

便利なズームは、時に思考を停止させる。

あえて便利な方を手放し、単焦点一本で足を使って撮る制約を自分に課す。

そうすることでしか撮れない画があるなら、不便な方を残すべきだ。

逆に、その単焦点をボケ味のためだけに持っているが、最近の自分の作風がパンフォーカス寄りになっているなら、その単焦点は役割を終えている。

焦点距離ではなく、今の自分の表現に必要なキャラクターかどうかで重複をジャッジするのだ。

年に一度のホームランが打てるなら残留

一般的に1年使わなかったら捨てろと言われるが、クリエイティブの世界には例外がある。

それは、稼働率は極めて低いが、使うと必ず自身の代表作になる機材だ。

例えば、特定の季節の光にしか合わないオクセのあるオールドレンズや、ここぞというポートレートでしか持ち出さない重たい中判カメラ。

これらは効率で言えば最悪だ。
だが、その機材でしか出せないトーンがあり、それがあなたの作家性を決定づけているなら、絶対に売ってはいけない。

便利だから使う機材は替えが効くが、これでしか撮れない機材は替えが効かない。

頻度という横軸だけでなく、生み出す成果の高さという縦軸で評価すること。

防湿庫の肥やしに見えても、それが伝家の宝刀なら、錆びないように手入れをして鎮座させておくべきだ。

思い出が機能の邪魔をしたら別れの時

最後に、最も厄介な敵について。

それは愛着だ。
初めて買った一眼レフだから苦楽を共にした相棒だから。

その感情は美しいが、機材としてはノイズになることがある。

もし、その古いカメラのAFが遅いためにシャッターチャンスを逃したり、高感度耐性が低いために撮りたい夜景を諦めているなら、それはもう相棒ではなく足枷だ。

機材は道具であり、記念碑ではない。
過去の思い出は、そのカメラで撮った写真データの中に全て保存されている。

ハードウェアという抜け殻に執着して、未来の傑作を撮るチャンスを逃してはならない。

手に取ったとき、撮りたいという衝動よりも懐かしいという感情が先に立つなら、それは感謝して手放す合図だ。

その売却益で最新の機材を買い、新しい思い出を作るほうが、カメラも喜ぶはずだ。